恋愛ごっこ?それとも本気の恋?
上司を好きになってしまうなんて恋愛ごっこでやめときゃ良いのに、自分でもわかる本気の恋。
直哉さんと仕事上でコンビを組むことになったんです。
と言うのも、大きなプロジェクトを請け負うことになり、中心になる社員の方に専属みたいな形でサポートをするため、コンビ体制をしくことになったのです。
私はまだ入社間もない新人女子社員。
社会人になるまでは、恋愛って自分と相手の属性が近いもの同士がするものだと思っていました。
だから、自分と相手との年齢の近さや大人としての成熟度の近さとか、逆に言うと、学生と既婚者の恋愛なんて属性がかけ離れすぎていて想像もできない感じでした。そんな私も社会人になってから恋に人生に背伸びをするようになったのでしょうか?恋愛価値観って変化するものなんですね。直哉さんと仕事のコンビを組むことになった話に戻ります――、対等の立場でチームワークをするというよりは単なるサポートの役割だと思っていたのに、あろうことか直哉さんとペアで仕事を遂行するなんて夢みたい、嘘みたいでした。
直哉さんに迷惑をかけないように、失望させないように、頑張るのみ!と心にきめました。 今まではオフィスにいることばかりだったけど、これからは外へもどんどん出ていくことになります。 プロジェクトの内容を完全に頭に入れなくちゃいけないし、直哉さんの得意先の方々も覚えないといけないし、頭が爆発しそうになる時もありました。
今までは遅くても6時半には退社していたのに、残業も増えてきました。 週2回は一緒に帰っていたエミともなかなか一緒に帰れず寂しかったけど、直哉さんとコンビを組んだことを知らせつつ恋愛相談にのってもらいました。するとエミは、恋愛ごっこかもしれない私の気持ちに共感してくれました。 既婚者を好きになるなんて、否定的な意見しか聞かされないかもしれないと思っていただけに正直、とても嬉しかったです。
さて、残業の続く日々、その日も遅くまで社内に残って残務整理をしていました。
すると突然「あ!おれ今日誕生日だったわ」と直哉さんがつぶやきました。
おもわず「おめでとうございます」と返すと「ありがとう。そういえばおめでとうって言ってくれたのマナミちゃんが今日初めてだよ」と言ったのです。
「 奥さんは?」と聞くと、3日前からユメちゃんを連れて実家に泊まりに行っているのだそうです。 最近ユメちゃんの夜泣きがひどくて、夜遅くまで仕事をしている直哉さんは、眠れなくって体がしんどい時もあると奥さんに言ったら、ユメちゃんを連れて実家にしばらく行ってしまったそうです。
もともと奥さんはユメちゃんを連れてよく実家に行くらしく、仕事中にメールで今から実家に行きます。2泊くらいしますとかって言ってきたりするそうです。
「寂しくないですか?」と聞くと「う~ん、いないといないで寂しいけど、静かなのも悪くないよ」と言ってました。
奥さんはこんなに素敵な旦那様を独りにさせて実家に行っちゃうなんて、すごい人なんだなと思ってました。その直後……
「そうだ、今日俺夕飯一人だからマナミちゃんさえよければこれから夕飯一緒にどう?」
と言われたので、もちろん!お誕生日一緒にお祝いさせてください!と答えて、その日は一緒に会社を出て、直哉さんが知っているイタリアンのお店で、食事をしました。
二人で食事をするのは前のランチからの2度目。
ランチの時は時間も短くてあまりおしゃべりできなかったけど、今回は本当にいろいろおしゃべりをしてしまいました。 直哉さんが今のプロジェクトにかける想いとかを聞いていると、仕事をする男性ってかっこいいとしみじみ思ってしまいます。 そして直哉さんが、自分のサポート役に私を自ら推してくれたことを教えてくれました。
入社して半年一生懸命頑張っているところ、そして素直であまり仕事に対して先入観がないところがいいと思ったと言ってくれました。
褒めているんですよね?と聞くともちろんだよ!と笑ってくれました。
直哉さんは聞き上手なので、中途半端な交際が続いているカレの話も聞いてもらいました。だんだん感じる社会人と学生のギャップとか。 少しワインを飲みすぎたのか、酔っ払っちゃった感じでした。 地下のお店だったので帰り階段を上る時、直哉さんは手を差し出してくれました。 大きくて、温かな手でした。 いつまでも握っていたいと思いました。
そして・・・このときの気持が恋愛ごっこから本気の恋へと移り変わろうとする転機だったように思います。
遊びじゃないの‥私は本当に直哉さんのことを好きになろうとしている。そんな気持が芽生えている自分に戸惑いと自信が同時にわき起こってくるような不思議で複雑な心理状態だったのです。帰り際、タクシーに乗ろうとした私に、直哉さんはありがとう、いい誕生日になったよと言ってくれました。 車内でうれしくてちょっぴり涙が出てきてしまいました。
なぜだか流れた涙の理由、それは直哉さんへの隠せない恋愛感情なんだとはっきり自覚した私でした。
恋愛ごっこじゃない、本当の恋だと自覚した瞬間でした。同時に、既婚者である直哉さんへの恋に負けたくないと思い始めた瞬間でもあったのです。