好きな人の住所を調べてしまったのです。
実は、仕事上のことで社員名簿を取り扱うことになったのです。その中には直哉さんの住所情報も含まれています。そのことを知っておきながら、気にもせず業務上以外のことに利用しないことはできても、必要以上の興味を抱くなと言われても無理な話でした。つい……好きな人がどこに住んでいるのか? そこに注目してしまった私でした。
それまでは直哉さんの自宅の最寄りの駅しか知らなかったけど、細かい住所を知ってインターネットの地図で検索してしまった私。
好きな人が駅近のマンションに住んでいることを知った私。
数日後の土曜日、まさか直哉さんに出くわすことなんてないだろうと思いつつ、ばったり出くわすことを期待しながら……直哉さんが住む街の駅に行ってしまいました。
週末の夕飯時――
直哉さんはきっと、家族と一緒に過ごしているのかしら? それとも家族で出かけている? そんなことを考えながら、地図で調べたルート通りに歩いていくと10分くらいで、直哉さんのマンションの前につきました。
なにやってるんでしょう私。
業務を利用して好きな上司の住所を盗み見る。
そうして、自分で自分が怖いとさえ思いました。 好きな人が住む家を見るだけのために電車に乗り、わざわざここまで来て……
直哉さんの住んでいる5階を見上げ、ポツポツと明かりがついているのを見たら、なんだか急に涙が出てきてしまいました。
何がわたしをこんなことをさせるような人間にさせたのかしら?
エントランスにまで入る勇気はとてもなく、マンションを一周してそのままもと来た道を戻りました。
直哉さんはこの道を毎日通っているのかしら?
私が来たことなんか全く知らないで、月曜日いつものように明るく挨拶をするんだろうな……