よく考えれば、あたしが恋心を封じ込めさえすれば互いに混乱した人生を歩むべくことなく、それぞれが、それぞれらしい人生を歩んでいたはずです。
既婚者との恋愛事情、離婚、再婚、後妻、元嫁さんからの再婚の条件、離婚後の養育費と慰謝料による再婚後の経済的困窮・・・
言い出せばキリが無いほど〝不利〟ばかりの再婚生活。そんな結婚に幸せなんて存在するんだろうか?
考えれば自信がなくなるから、考えないように努力するしかないような?これほど未来の幸せに自信がないのにどうして結婚なんてするんだろう?
・・・と、ときおり自分でも説明できない気持ちに揺れています。
そんなとき、直哉さんから改めてプロポーズされました。
「マナミのこれからの人生を俺に預けてほしい」
私はうれし涙を流しながら、頷きました。
今春、入籍と結婚式を挙げることを目標に、お互いに準備に入ることにしました。
私は今まで買うのをためらっていたウェディング雑誌を何冊か買い、結婚式を挙げる式場をいろいろと考えるようになりました。ウエディングドレスも自分の憧れのイメージと値段が、なかなか条件に合わないものだなぁと思ったりしました。
お料理教室にも通いだしました。
お料理は嫌いじゃないけれど、実家住まいだったのでママの手伝いをするくらいでした。これからは何でも自分で作らないといけないわけで、冷蔵庫の中の食材でささっと作れるようになりたいものです。いろいろ調べて、速修コースがあるところに通うことにしました。家庭料理の基本と、ある程度のメニューを一通りかなり駆け足だけど教えてくれるコースです。
そこに通っているのはみんな私と同じように結婚を控えたような花嫁予備軍。
いろんな情報交換が出来たし、なによりみんな幸せな顔をしていて、話も合い、教室に通うのは楽しかったです。
ある友人から、こんなことを言われました。
「マナミちゃんとさえ出会わなかったら、あの人は離婚なんてせずに今だって幸せに暮らしているはずだよ。相手の奥さんだってマナミちゃんさえいなければシングルマザーになっていないはずだよ?」
そう言われても、私は言い返せませんでした。
純粋に、その通りだと思ったからです。でも、相手が既婚者だろうとなんだろうと人を好きになってしまう可能性は誰にだってあります。
そこで、思いとどまるのか?それとも、自分の気持ちに正直になるのか?
その、胸の中でする小さな決断によって、人生は変わってしまう。
私たちは幸せになった。
一方、その影で泣いている人がいる・・・
子供達は今、何もわからないから差し込んできた影には気づかないけれど成長してから理解するとき、父親を憎むようなことがあるかもしれない。
これから後妻となって幸せを目指そうとする私は、ひとつ、胸に刻んでおきたいことがあります。それは、私たちの幸せの影で不幸を背負った人たちの人生です。
私が愛する人の後妻となれたのは、元嫁さんがシングルマザーになってくれたおかげです。将来、その事実を常に省みることが、元嫁さんや子供さんの人生をせめて裏切らないことである気がします。